2019.11.11| "文系ソムリエ"が教えるワインの楽しみ方

No.8 ワインの原風景

皆さまにとってワインとの出合いはどんなものでしたか?少し思い出をひも解いてみませんか。この場合、初めて飲んだワインという意味ではなく、ワインというものを知った、意識したという状況やきっかけの事です。ワインへの原風景とでもいうようなエピソードを、きっとお持ちなのではないでしょうか?

実は、同じ質問をイタリア人にしてみても、ほぼ同パターンなのです。「物心が付いた時から、いつも食卓にあった」。中には「子供の頃から、普通に水で薄めて飲んでいた!(飲まされていた?)」というツワモノもいますが、とにかく日常的すぎて格別に認識する機会を得なかったのでしょう。反対に日本人の場合は、年代や地域的な差も大きく千差万別で、思わず話に花が咲き、なかなか面白い話題になります。

そして、片田舎で育った私自身の〝運命的な出合い(笑)〟はと言うと、中学生当時夢中だった、オフコースというバンドの「ワインの匂い」という歌でした。歌詞の中に出てくる〝ワインの好きな娘〟が織り成す、なんとも都会的で、未だ見ぬ甘く切ない大人の世界観は、そのまま私の中で〝ワイン〟のイメージへと昇華し、その言葉の響きをも含めて、すっかり心を奪われてしまったのです。その歌から漂ってくるワインの匂いに、それこそ〝心酔〟してしまった私は、それ以来ひたすらワインに憧れ続けてきたのでした。

やがて念願のワインデビューを果たすのですが、その際には、ずっと想像してきたスウィートな(後に知ることになるデザートワインの様な)味とあまりにも違うので、大いに戸惑ったことを覚えています。それでも「これが大人の味なのか」と妙に納得したものでした。ただそれも一時で、たちまちその味を覚え、真の意味での〝甘美な味わい〟に魅了され、そして私は、本物のワインの好きな娘になりました。その事実は、ワインを夢見ていたあの頃の自分を、時に感慨深く思い出させてくれます。それにしても、あの出合いから、ワインとのお付き合いも長い年月を重ねましたが、不思議なことにそのイメージはなんら変わらず、歌のように〝永遠におしゃれ〟で〝大人の香り〟そのままなのです。やはり私は、あの日からずっと、あのワインの匂いに酔いしれているのかもしれませんね。

 

〈この記事は2019年11月11日発行「LaPassione! 9号」の内容を掲載しています〉

 

ソムリエ・小関 智子 Tomoko Koseki

ソムリエ・小関 智子 Tomoko Koseki

クオルス・イタリア駐在員。エミリア・ロマーニャ州在住でAIS(イタリアソムリエ協会)のソムリエの資格を持つ。猫とワインとサムライをこよなく愛する。

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