2021.12.11| cibo 食材に誘われて

島黒豚、和牛、フルーツ。 ブランド食材の宝島、佐渡を訪ねて

日本海に浮かぶ佐渡島は、美味しい食材の宝庫だ。クオルス・リストランテの各店舗でも、島産の和牛をはじめ、牡蠣などさまざまな食材をイタリア仕立てにして提供している。普段使っている食材がどんなところで生まれているのか、今後、佐渡食材とどんなコラボレーションができうるのか。代表、高波利幸とキャスト5名が海を渡った。

 


「島黒豚」は循環の輪の中に
レストラン「プラージュ」@Ryokan 浦島(佐和田地区)

「竜宮城のように時間を忘れて過ごせる」がコンセプトのホテル、Ryokan浦島。館内にあるレストラン「プラージュ」では、フレンチのコース料理を提供している。佐渡に到着したクオルス・リストランテの一行は、まずホテルのレストランへ。「島黒豚」をメインとしたコースをいただいた。「若き須藤シェフの料理は、一皿ごとに異なる食感、2種以上の味わいを盛り込むフレンチ(高橋誠/シェフ)」で、「佐渡食材をフランス料理の技法で丁寧に組み立てたもの(横井穂高/ラ・ペントラッチャ」。食材は90%以上が佐渡産という「島フレンチ」だった。

 

真蛸と夏野菜のガスパチョ仕立て

 

あおさのブレッド

 

あおさの佐渡牛乳バター

 

イカチョビ

 

黒豚のポルト酒ソース トリュフ風味

 

ラズベリーガトーとピスタッチォのアイスクリーム

キャストたちが最も興味を寄せたのは、食材一つ一つが、循環の中にあるということ。Ryokan浦島を経営している須藤由彦会長の話は、とても印象的だった。「島黒豚(ブリティッシュバークシャー)の餌は、島内のものを利用しているというくらいの知識だったのがその広がりと”地元ために”という思いは想像を越えていた(高橋太郎/アッラ・ベッキア・ペントラッチャ)」。飼料は、島内の酒蔵「北雪」Y 35の酒造りで廃棄されるはずの65%の米粉、出荷できないリンゴを使ったリンゴ酢。逆に豚の糞は発酵させて肥料とし、リンゴ農家へ。「島の産業や自然を生かした、いわば循環型養豚。目の付けどころが素晴らしい(泉正広/アッラ・ベッキア・ペントラッチャ)」。さらに、休耕田を使った放牧では、豚が草を根こそぎ食べることで、再び農地として使えるようになり、野菜栽培をしたり、太陽光発電によって、地下水を組み上げ、飼料用の水にシステムを構築したりしている。

代々、水産加工を手がけてきた中で、須藤由彦会長が養豚に乗り出したのは、客のニーズを見たからという。「佐渡は新鮮な魚が豊富。ただし何泊もしていると、飽きてくる。美味しい肉を提供できないだろうか」。もちろん、失敗もあった。「過去に挑戦した事業の8割は失敗という言葉を聞いて、それでも新たな事業に取り組む姿勢には学ぶべきものがあった(和田正博/イル・パッチョコーネ・ディ・キャンティ)」。実際、まだ挑戦は続いていて、サクラマスの養殖、利尻島から昆布の幼体を取り寄せて育て、ウニに食べさせるなど、「誰も思いつかないようなことをやってのけている(泉)」「”自給自足ができる島”を目指し、実現へと着実に進んでいる姿が印象的だった(高橋誠)」。

「地産地消」。そんな納まりのいい言葉からはみ出し続けている「挑戦」。「根っこにあるのは、地元の皆さんに”公平に”という思いだ。「会長からは、この言葉が何度も出てきて、地元への愛と、島民を思う気持ちが伝わってきた(和田)」。


緑の斜面でのびのび。「和牛の島」を知る
市営堂林放牧場(金井地区)

国仲平野を一望する標高200mの緑の斜面。20haの広がりの中、50頭の雌牛が放牧されている。最高級の黒毛和牛種だ。「佐渡市が運営する4つの放牧場の一つ。市営ということで、公務員の方々が畜産業に取り組んでいたことにまず驚いた。古くから黒毛和牛を育てる”和牛の島”だけあって、力の入れようがうかがえた(高橋太郎)」。佐渡では畜産を兼業にしていたり、高齢化によって冬以外は預けたいという生産者が多かったり。そんなニーズに対して、市がいくつかの放牧場を運営。「グリーンシーズンに牛を受け入れて放牧する”夏山冬里”の畜産が行われている(高橋誠)」。

ただ、道のりは平坦ではなかった。「開拓した山のため、種を蒔いてもうまく草が育たない、急勾配での作業は困難など大変な思いで放牧をされていた(高橋太郎)」。そんな中でも、牛たちがストレスフリーで過ごせる環境を整え「50頭以上を耳環で確認し、体重測定や採血、ダニ駆除を行った後で一斉に放牧(泉)」。継続するにつれ、出産率も上がっているという。

そもそも、佐渡で育てられているのは「肥育牛」より「繁殖牛」。母牛から子牛を産ませ、育て、その後、業者に売っている。「約100頭の牛を備え、年4回の競りには、米沢、仙台、飛騨などそうそうたるブランド牛飼育農家が子牛を買いに訪れるという(和田)」。つまり、畜産業のベースをつくっているのだ。「先日は、上越市頸城(くびき)の生産者が10頭を競り落としたとか(泉)」。佐渡生まれの頸城牛が、近々、出てくることだろう。頸城牛を定番メニューとして提供しているクオルは「肥育農家とつながっり、ブランド食材「佐渡牛」の食べられるイタリアンレストランとして、佐渡牛を発信していきたい(高橋誠)」。そして、食材とともに地域発信するために「ほかの佐渡の食材のことも知って、料理に落とし込んでいきたい(横井)」と話した。

 


佐渡はフルーツの島でもあった!
吹上農園(羽茂地区)

最後に訪ねたのは、佐渡島の南西部にある羽茂(はもち)で「ル・レクチェ」や「八珍柿」を生産している吹上農園。羽茂地区は、沖合を流れる暖流や少ない降雪量から、果樹栽培に適した地域という。ここで果樹栽培を始めて85年、4代目となる吹上清さんは「”量よりも質”を掲げ、美味しさ、濃厚な味わいを追求している(泉)」。「2割をJA、残りを直販と、SNSを活用して精力的に情報発信していて(高橋誠)」、「ラッピングやHPなど独自のセンスでブランディングに取り組み、成功している(和田)」。

 

吹上清さん

「ル・レクチェ」については26年前から、いち早く栽培を始め、2004年には新潟県果樹振興協会主催の品評会で「最優秀賞」を獲得、4年連続で受賞するほどのクオリティを維持。「柿に比べて4倍の手間がかかる果物(和田)」で、ル・レクチェの樹の隣に受粉用の和梨の樹。「和梨の花を摘んで粉々にしたものをル・レクチェに受粉。4月には病気予防、その後摘果、残した実一つ一つに手作業で袋かけして、さらに7回ほど薬の散布。とても手のかかる作業だと知った(泉)」。

 

袋がけされた状態のルレクチエ

一方、八珍柿は、種のない珍しい品種で、その美味しさはすぐに評判となり、農園のサイトでも注文が殺到しているという。


生産現場を見たからこそ、提供したい思いも強くなった。「毎年12月に提供しているスペシャルメニュー、マスカルポーネ詰めル・レクチェを期間限定で、羽茂産を提供できれば(泉)」「柿も今後、メニュー開発していきたい(高橋誠)」。「イタリアの柿(日本語からcachiと呼ばれる)の生産量は世界5位。そんなつながりを考えても、ぜひ独自のスペシャルメニューを出していきたい(泉)」。


 

佐渡島という土地の力はもちろんのこと、生産する人、発信力の大切さを実感した佐渡視察。「平場がほとんどない土地を切り開きいてきた先人たちの歴史の上に、農業や畜産業がある。その重みや思いのある食材を使わせていただいていることのありがたみを改めて感じた(高橋太郎)」。「トラットリア(食堂)というコンセプトに沿ったメニューの底上げ、これをお客さまに伝えるためのキャストのコミュニケーション能力のアップ。さまざまな課題をくれた(高橋誠)」。島旅の成果は、レストランの季節限定メニューで提供中。

 

 

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