2020.11.15| 情熱のイタリアコラム

No.16 “CULTIVAR”(オリーブ品種)を楽しもう!~Olio EVOの世界へようこそ②~

10月の声を聞くと、もう早摘みタイプのオリーブの収穫が始まります。秋から冬にかけてはこの採油作業で、オリーブ農園とフラントーイオ(搾油所)は大忙しの季節。収穫から搾油までの時間は短いほど仕上がるオイルの酸度を抑えることができ、より高品質のOlio EVOに仕上がるので、とにかくスピードが大事!なにしろOlio EVOは“オリーブ果実の生ジュース”、鮮度が命です。

収穫から搾油までは24~48時間が理想と書かれたものも未だに目にしますが、現在イタリアでOlio EVOを作っているメーカーの間では「最低限でもその日のうち」が常識で、最大限の努力と工夫で「数時間以内」での搾油を実現させているところも多々あり、生産者たちは自社オイルの品質とその個性を競い合っています。

この一度火がついたら猪突猛進、より良いもの作りへの飽くなき情熱と追及の様は、やはりイタリア人だなぁと感心するところ。この十数年のイタリアにおけるオリーブオイルを取り巻く状況は、かつて“質より量”の飲み物とされ、長い間その名声や文化にフランスに大きく水をあけられていたイタリアのワインが、有志の生産者の努力はもとより支持する消費者の意識の変化によって、ものすごい勢いと熱量で、その品質とイメージを向上させてきたイタリアワインの世界を彷彿とさせます。

オイルの品質の高さは「酸度」でも数値化されますが(低いほど高品質)、「エクストラ・バージン・オイル」と名乗れる国際基準である「酸度0.8%以下」に対しては、一部の作り手からは「ゆるすぎる~!」との声も上がっています。「自分たちのEVOは酸度0,1~0,2%を実現している。基準ギリギリの酸度0.7%~0.8%の代物とでは大違いじゃないか。せめて酸度0.3%位までのものには、何か別の称号でも与えてくれないものか」と言うわけです。

そんな声に対応して将来的には「Olio “Super” Extravergine di Oliva」なんてカテゴリーが出来たりして(笑)。日本語のネーミングだと「超極上オリーブオイル」とでもなるのでしょうか。いづれにしても、それだけクオリティーを追求し、最新式の搾油機械に投資もして、企業努力で実現した自分たちのOlio EVOに対するプライドが伝わってくるエピソードです。

ところでイタリアのオリーブオイルの生産量は、一国だけ突出しているスペインに次いで世界第2位。第3位のギリシャとは僅差です。しかし生産量ではなく、高品質に加えバラエティ豊かなその層の厚さ、また“オイル・カルチャー”という観点から“Olio EVOの世界”をけん引しているのは、やはりイタリアです。ちなみに消費量ではイタリアが第1位。

そのイタリアが今発信しているトレンドのひとつが「MONOCULTIVAR」または「MONOVARIETALE」と呼ばれる単一品種から作るオイルです。なにしろこの国には500以上の「CULTIVAR(イタリアで“クルティヴァル”と発音)」と呼ばれるオリーブの“品種”があり、世界全体の30%以上が集中しているそう。最北の一部地域を除いて、各地にオリーブの固有&土着品種が存在します。市場には「単一品種」を強調する製品も続々と出てきており、オイル専門店で「イタリア縦断!単一品種Olio EVOの飲み比べ6本セット!」なるものを見つけた時には、私も思わず飛びついてしまいました(笑)。

“Made in Italy”のOlio EVOの魅力は、高品質に加えて、まさにここにあります!イタリアワイン同様に、オイルを通じて州ごとの品種とテリトリーによる個性の違いを味わって、食卓上で“イタリアの旅”を楽しむことができます。それは自分の一押し品種を探し当てる“お宝発見”の旅にもなるでしょう。そしてこれならワインが飲めない方でも、参加可能です(笑)。さらには健康と美容にも貢献してくれる旅とあって、そのメリットは尽きません!!

さて、皆さんはこの500を超えるイタリアのオリーブ品種の中で、どんなものをご存知ですか?お馴染みのものもあるのではないでしょうか。ほんの一部ですが、北から南までイタリアを代表するCULTIVARたちを簡単にご紹介させていただきます!

1. レッチーノ…トスカーナ原産とされ中部イタリアを中心に全国的に広く栽培されている。ビタミンEが豊富。

2. フラントーイオ…トスカーナ原産。イタリア国内のみならず世界的にも多く栽培されている。イタリアンオリーブの代名詞ともいえる品種。

3. カザリーヴァ…オリーブ栽培のほぼ北限地域でもありイタリア最大を誇るガルダ湖周辺を代表する品種。

4.タッジャスカ…リグーリア州イタリアン・リビエラ西海岸を代表する土着品種。マイルド系オイルを作る品種として知られる。

5. ノストラーナ・ディ・ブリジゲッラ…エミリア・ロマーニャ州のブリジゲッラ原産。この品種を90%以上使用するオイルは1996年イタリアで最初にDOPの称号“Brisighella DOP”を獲得。

6. ギアッチョーラ…同エミリア・ロマーニャの土着品種。レアな品種だが単一品種オイルとして評価が急上昇中。

7. モライオーロ…トスカーナ原産で中部イタリアを中心に全国的に栽培されている。生産性に優れ、ポリフェノールも豊富。

8. イトラーナ…ラツィオ州南端ラティーノ県の土着品種。同県ソンニーノ地区のオリーブ園には古代より引き継がれてきた“石積み垣”が残る。食用オリーブでも有名。

9. コラティーナ…イタリアでの圧倒的生産地であるプーリア州を代表する品種。抗酸化成分が豊富で病気にも強くBIO栽培にも適している。

10. カロレーア…オリーブが州の重要産業のひとつで量産地でもあるカラブリアを代表する品種。州都カタンザーロを中心に広く栽培されている。

11. ノチェッラーラ・デル・ベリーチェ…シチリア西部を原産とし、南イタリアに広く栽培されている品種。食用オリーブでも有名。

12. ボサーナ…先史時代すでに野生のオリーブでオイル作りがされていたというサルデーニャ島。同島を代表し一番多く栽培されている土着品種。

いかがでしょうか?気になったCULTIVARはありましたか?ルックス(笑)もそれぞれ可愛くて迷ってしまいますよね。今後「Made in Italy」のOlio EVOを選ぶときには、是非その品種にも注目してみて下さい。選択の楽しみがより一層広がること間違いなし!そしてここでお知らせです。来年入荷の、クオルス専用に瓶詰めされるレアなOlio EVOのオリーブは、11月初旬の今現在収穫と採油作業真っ只中です。今年は収穫量こそ少ないそうですが、質は上々との報告が来ています。さあ、どんなCULTIVARしょうか?こちらは次回ご紹介することにいたしましょう!(③へ続く)

 

クオルス・イタリア駐在員/小関智子 Tomoko Koseki

クオルス・イタリア駐在員/小関智子 Tomoko Koseki

エミリア・ロマーニャ州在住。AIS(イタリアソムリエ協会)のソムリエの資格と公認添乗員ライセンスを持つ。現地で出会ったワイナリーとクオルスを繋いでいる。

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