2021.09.17| 情熱のイタリアコラム

No.18 SAGRA(サーグラ)、“味覚の秋祭り”の季節到来!! その①

例年なら暦どおり9月に入るタイミングで気温が下がるイタリアですが、今年は10日程早く8月の4週目に入った日を境に急に過ごしやすくなりました。記録的な猛暑となったこの夏も終わり、いよいよ食欲の秋の到来です!

ところがイタリアには、この“食欲の秋”という言葉はありません。イタリアの友人たちと会食した折、「食欲の秋だよね~」と思わずつぶやいたことがあったのですが、それに対する皆の反応は一様に「えっ??」。そしてすかさず「それを言うなら“食欲のナターレ(クリスマス)”でしょ~」「秋はナターレに向けてダイエットを開始する季節!」と切り返され、こちらも「ええっ、ダイエット?!」と驚いたことを覚えています。

しかーし、クリスマスシーズンに負けず劣らず「これでもか!」と食欲をそそる魅惑のイヴェントが目白押しのイタリアの秋…各地でご当地特産の食材を楽しむSAGRA(サーグラ)が連日のように開催され、私にとってはやっぱり食欲の秋!ちなみに「秋はダイエット」と言った友人からも、実際にそれが成功したという報告は未だ聞いたことはありません(笑)。

イタリア好きの皆さんなら、このSAGRAというイタリア語、どこかで聞かれたことがあるのではないでしょうか。SAGRAとは収穫祭という意味合いで、大地からの恵みに感謝を込め、地元を挙げてその収穫を祝う“食のお祭り”のことです。元来は宗教的な祭礼を示す言葉だったのですが、今ではSAGRAと言えば地元の特産物に関連したイヴェントを指すことが主で、各地の年中行事の一つとなっています。それぞれの食材の旬に応じて年間を通じて開催されますが、なんといっても秋がメイン!

我がエミリア・ロマーニャ州でも、夏から晩秋まで様々なSAGRAが開かれており、この時期は予定を合わすべく催事カレンダーとにらめっことなります。ちなみに地元で配布される「SAGRE e FESTE」という小冊子のページをめくっていくと、我が家から車で30分程の範囲でも上記のようなSAGRAが開催されています。例えばどんなSAGRAがあるのか、実際どのような雰囲気なのか、早速9月1日から始まった「Sagra del Tartufo(トリュフ祭り)」に行ってきましたので、その様子を少しご紹介させていただきましょう。

このSAGRAはFerrara(フェッラーラ)県のSant’Agostino(サンタゴスティーノ)という人口7000人程の町で開催されているのですが、こちらは全国に57ある「Città del Tartufo(トリュフの町)」にも認定されているトリュフ産地です。意外に思われるかもしれませんが、エミリア・ロマーニャは他のどの州よりも多い11を数える地域がこのメンバーに登録されています。隠れた名産地もしくは穴場!?(笑)。いづれにしても美食の宝庫として知られる同州の面目躍如といったところでしょうか。

さて、この小さな町のSAGRAですが “テント・レストラン”と呼ばれる大型テントの会場で、雨天でも問題なく開催できるようになっています。通常なら最大500席を確保できるセッティングになっていますが、コロナ感染拡大防止の対策下で開催される今年はテーブル数がかなり減らされ、それぞれの間隔も広く取られています。またテント入場時には「Green Pass(グリーンパス)」と呼ばれるワクチン接種証明書の提示が求められました。

このように例年とは少し趣を異にしていますが、一旦テーブルについてしまえばいつものアットホームな感じ。とは言えオープン初日には “ウェルカム・スプマンテ”が振舞われたり、平日の曜日によっては“目玉”となるサービスやメニューを提供したりと、期間全体に渡り魅力ある内容で運営されています。またメニューは、当然ですがアンティパストからセコンドまでトリュフ三昧。毎年新しいメニューも登場するので、その点でも楽しませてくれます。なにしろお客さんは町民をはじめ周辺地域のリピーターの方々で、開催期間中に何度も足を運ぶ人も多いのです。

ちなみにメニューのいくつかをご紹介すると、「Tagliolini al tartufo(タリオリーニ・アル・タルトゥーフォ)」「Lasagne al tartufo(ラザーニェ・アル・タルトゥーフォ)」 「Tagliata al tartufo(タリアータ・アル・タルトゥーフォ)」「Cotoletta al tartufo(コトレッタ・アル・タルトゥーフォ)」等々、正にトリュフ尽くし。ただしドルチェに乗っているのはトリュフ“チョコレート”(笑)!ご覧のとおり9月のSAGRAは「黒トリュフ」が主人公ですが、実はサンタゴスティーノでは更に貴重な「白トリュフ」も採れるので、それを堪能できるトリュフ祭りが再び11月に開催されます。

このSAGRAを運営し支えているのは地元の多くのボランティアの人たち。その中に交じってカメリエーレを務める青少年たちもいたのですが、それはこのSAGRA自体が1910年から続く地元の伝統あるサッカークラブ「C.S. S. Agostino A.S.D.」のメインスポンサーを務めていることから、所属する選手たちがお手伝いに参加しているのです。彼らのチームカラーはVerde(緑)。会場ではカメリエーレたちのユニフォームやテーブルクロスなどがこの色でコーディネイトされており、チームへの熱い思いが伝わってきました。

地元が誇る食材の文化と伝統を守り、その美味しい料理で地域の人々に喜んでもらい、そこで生ずる利益で地元の青少年たちの活動を支えていく。そんなSAGRAに行く人は、その事も良く理解しているので、ますます喜んで出かけていきます。正にWin-Win!このようにSAGRAとは、あふれる地元愛で心もお腹もいっぱいに満たしてくれる素敵なイヴェントなのです。

クオルス・イタリア駐在員/小関智子 Tomoko Koseki

クオルス・イタリア駐在員/小関智子 Tomoko Koseki

エミリア・ロマーニャ州在住。AIS(イタリアソムリエ協会)のソムリエの資格と公認添乗員ライセンスを持つ。現地で出会ったワイナリーとクオルスを繋いでいる。

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