No.13 若き“ドットーレ”誕生!そして未来に羽ばたくワイン!!
7月16日、「スクアドラ・クオルス」のメンバーで、この「LaPassione!」の記事でもお馴染みのテヌータ・ウッチェリーナの2代目Hermes(エルメス)君が、ボローニャ大学で「ブドウ栽培とワイン醸造学」を修め、この日めでたく“Laurea(卒業)”の日を迎えました!今回はそのレポートをお届したいと思います。
ちなみにこのLaureaですが、日本のいわゆる卒業式とは異なり“卒業の為の最終口頭試験および学位授与(認定)”という内容で、その様子は人気コミック「チェーザレ」の中でジョバンニ・ディ・メディチ(後の教皇レオ10世)が大学を卒業する場面(1492年)にも描かれていますが、5世紀以上を経た現在でも様式が変わっていないことに驚きです。
だだし、本来その儀式は大学校舎の然るべき教室で行われるものですが、コロナ禍の影響を受け、なんと「オンラインLaurea」という形で実現することとなりました。そして今回、熱烈な招待を受けていたにもかかわらず参加が叶わなかった高波社長からの手紙を携えて、私ひとりでその会場となったカンティーナに向かったのです。
ワイン直売所の一角に設置されたテーブルに座ったエルメス。PCに向かっての試験官とのやりとりで、口頭試験を受けています。親族はもちろん友人や仕事関係者、ご近所さんまでが集まってその様子を見守っていて、、、ものすごく緊張するシチュエーションに思えますが、彼は堂々としたものです。
卒論のテーマは「Uva Longanesi(ウ―ヴァ・ロンガネージ)」について。我らが“Burson(ブルソン)”を生む、この土地の宝石とも言えるブドウ品種です。この卒論を書くために、ロンガネージに関しての様々な実験と検証を重ねてきた彼は、その研究内容の説明を行い、続いて試験官達から出される「ロンガネージ種の生育において、ある特定の状況下で起こり得る発育状態やその対処方法は?」といった、いくつかの専門的な試問にもよどみなく答えていきます。
そして開始から約30分、遂にその時がやってきました!最終試験の点数の発表に続く、「Congratulazioni(おめでとう)!!」という試験官の言葉とともに、“Dottore(ドットーレ)「学士」”の称号を授与されたのです。エルメスは椅子から飛び跳ねて万歳!参列者からは割れんばかりの拍手と歓声が起こります。若きドットーレ誕生の瞬間でした。
母親のアントニエッタさんから、お約束の“月桂冠”が戴冠されましたが、とても様になっています!ちなみに、古代より勝利と栄誉のシンボルとされた月桂樹の葉(ローリエ)で編んだこの冠は、ラテン語で「laurea insignis」と言い、イタリア語の「Laurea(卒業)」の語源です。そして大学卒業生を指す「Laureato」は「月桂冠を頭上に戴く者」という意味に由来するそうです。なるほど、だから月桂冠を戴冠するのですね!
本当ならここで参列者からのハグ&キスの祝福の嵐となるところですが、時節柄それは控えめに行われ、代わりに参列者との写真撮影大会が始まりました。ここでは皆マスクを外します(笑)。まだ小学生だった少年エルメスの頃から知っている私は、それこそ親戚のおばさんのような気持ちで感慨もひとしおでした。立派になったねぇ。
そして、単に両親の後を継ぐという以上に、その背中を見てきたからこそ知っているはずの、“ワイン造り”という見た目よりもずっと地味で根気の要る、絶え間ない努力が求められる世界へ、覚悟をもって飛びこんで行くことを決めた若者に、敬意を込めて心からのエールを送りました。「その情熱を持ち続けて、自分自身を表現できる素晴らしいワインの造り手になって下さい!」。
お決まりのスプマンテでのお祝いも終わる頃、やっと落ち着いたからと、高波社長からの手紙を読み始めたエルメス、そして両親のアントニエッタとアルベルト。祝福の言葉、出会いの時から続くウッチェリーナ・ファミリーへの信頼、未来に渡り世代を受け継いでの変わらぬ絆を願う真心が綴られたその内容に、3人共いたく感激していました。アントニエッタさんは瞳を潤ませながら一言。「この手紙はアルバムに飾って大切に持っていますね!」。
その手紙の中で、「皆で一緒に乾杯できる日を楽しみにしている」と語られていたワイン“Hermes & Gio (エルメス&ジオ)” は、クオルス・オリジナルワインの新作のひとつで、元はエルメスの18歳(成人)を記念して作られたもの。地元の代表的なトレッビアーノ種に「貴腐菌」を繁殖させて仕上げるという挑戦的な作品で、将来に向けて様々な試みを重ね続けて進化させて行こうという趣旨の、「未来へ!」向けて生まれたワイン。
次世代に向けて、ウッチェリーナとクオルスの思いをひとつにして取り組む象徴として、それぞれの未来を託す二代目の名前を冠しての登場となりました。エルメスのアイディアで、熟成も現在の木樽の利用から陶器に移していく予定で、これはブドウ本来のアロマをより生かすためとのこと。このワインを進化させていくための挑戦は今後もどんどん続けられていきます。まさに未来に羽ばたいていくワインです!
クオルスが信頼を寄せる、“Passione(情熱)”をもった若き醸造家の進化を見届けられる特別な1本。皆様にも是非一緒に見守って、味わって、その成長過程を楽しんでいただけたら、我々もこんなに嬉しいことはありません。そんなことが出来るのも“単なる飲み物ではない”ワインの魅力、そして醍醐味!果たして10年後、20年後その先は一体どんなワインになっているのでしょうか?
クオルス・イタリア駐在員/小関智子 Tomoko Koseki
エミリア・ロマーニャ州在住。AIS(イタリアソムリエ協会)のソムリエの資格と公認添乗員ライセンスを持つ。現地で出会ったワイナリーとクオルスを繋いでいる。
エルメス&ジオ
クオルス・オリジナルのワイン
Tenuta Uccelinaの跡取り息子であるHermesエルメスの18歳誕生日を記念して造られたワイン。
ボローニャ大学醸造学科を卒業した彼により進化が予定されていま
貴腐菌の働きでブドウの糖度を上げ、トレッビアーノ種とは思えないアルコール度数が高いしっかりとした白ワイン。