2022.08.06| PASSIONE “情熱”

‘013 南青山イタリア化計画〜新潟のイタリア料理店がローマに店を出した!〜

1993年創業。100年続くイタリア料理店を目ざして、新潟、都内、イタリアへと道を開いてきたクオルス・リストランテ。現在、レストランのほかに、伝統的バルサミコ酢樽をモデナに所有し、都内にモッツアレラチーズ工房、上越にクラフトビール醸造所を展開。イタリア食文化に感銘を受けたことで始まった挑戦は、これからも続く。

南青山イタリア化計画

川崎店がうまくいって財務内容も少しずつ改善されると、またふつふつと新しい展開への意欲が湧いてきました。ちょうど、数年前、高橋さんのところから「イタリアに修業に行く」と出ていった若者が帰ってくるという話があり、「ぜひ戻ってきてもらって、新しいレストランのシェフをやってもらおう」という構想にまとまりました。 そうしてできたのが、南青山1丁目のレストラン(「カザーレ・デル・パチョッコーネ」。現在は閉店)です。このレストランのオープンをきっかけに、クオルスは「調理師学校の新卒を採用して育成する」という人材育成戦略を取るようになり、若い人たちを積極的に採るようになりました。 

気がついてみると、その時点ですでに創業してから16、17年経っていました。無我夢中、がむしゃらにレストランを作って働いてきた結果でしたが、客観的に見ると、なかなか面白い物語になっているのではないかとも思えてきました。それな「新潟発イタリア料理店」をさらに前面に打ち出してやっていこうと考えました。 

 

2009年開業の南青山1丁目店。6丁目の南青山店とともに「南青山イタリア化計画」の一角を担った。

南青山店があるのは南青山6丁目、新しいレストランは南青山1丁目。自転車で10分くらいの距離です。間にワイン専門店やジェラート専門店をつくって、元からあるイタリアブランドのお店と合わせて「南青山イタリア化計画」としてみてはどうだろうと思いつきました。ドミナント戦略(地域を絞って集中的に出店すること)で、いろいろなイタリアがらみのお店を出して いけば、いつかは実現するでしょうし、マスコミも注目するでしょう。 街全体でイタリア食文化をアピールしていけば、お客さまはイタリアらしさ、イタリアっ ぽさを感じながら好きなお店を選んで楽しんでいただける。既に、名古屋港イタリア村があり、川崎店のあるラ・チッタデッラもイタリアの街並みを再現した商業施設です。イタリアそのままではできないにしても、イタリアっぽさが感じられる空間というのは、ぜひ、作ってみたいと思っています。 

私たちは「何年後に何店舗」というように、数を追いかけることはしません。それぞれの レストランごとに売上げ目標は立てますが、それは仕事の結果として表れるものとして、一組一組のお客さまに満足していただく仕事を納めることを第一に考えています。 レストランですから、料理がおいしいのが大前提。後は、どれだけの付加価値を提供できるか、それを常に突き詰めています。数字のために仕事をするのではなくて、 夢を追いかけて仕事にする。それはずっと、変わりません。

次回「014 日本人がローマにイタリア料理店?ローマ出店の理由と現実」へつづく

 

高波利幸 Toshiyuki Takanami

1968年、新潟県上越市生まれ。高校卒業後「服部栄養専門学校」に入学し、料理の勉強を開始する。在学中、ヨーロッパに研修でイタリアへ行き、イタリアの食と文化、そして人に大きく感銘を受ける。卒業後、イタリアレストランで修行を開始。7年間東京で暮らしたのち、新潟に帰郷。1993年4月、地元上越市にイタリアレストランをオープン。現在イタリア料理店3店舗、モッツアレラチーズ工房、クラフトビール醸造所を展開。その他飲食店コンサルティング、プロデュースも手掛ける。

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