2022.06.26| PASSIONE “情熱”

‘011 ほかにはない「商品力」を求めて〜新潟のイタリア料理店がローマに店を出した!〜


新潟県内に2店舗、東京都青山や神奈川県に2店舗のイタリア料理店を展開するクオルス・リストランテ。始まりは、代表である高波利幸が25歳の時だった。上越市を出発点に関東へ、さらには本場ローマへ。新潟発イタリア料理店の軌跡を、代表自身が振り返る。それは一軒の料理店の物語、地方発一企業の挑戦体験だ。

ほかにはない「商品力」を求めて

ここで少し、レストランのサービスについてお話ししましょう。 メニューは定番8割、月替りの食材メニューが2割。旬の食材メニューがヒットして定番になることもありますが、そうなると埋もれてしまって、売れなくなることもよくあります。よって、定番は変えずに、旬の食材メニューはお客さまからのリクエストにお応えする形で加えることが多くなってきました。 

 

月に1 回、上越店で開かれる料理研究会。新メニューもここで披露される。2011年に建物の3階にデモンストレーション・キッチンを設置

「5月になるけど、そろそろホワイトアスパラガスが食べられるシーズンだよね?」
「そろそろ黒トリュフの時期じゃなかったっけ?」
「ポルチーニって、いつごろの食べ物?」

そんなお客さまとの会話も、楽しみの一つです。常連の方の中には、旬の食材を楽しみにしていらっしゃる方も多く、パスタは定番メニューでも前菜は旬の食材から選んだり。時には、特別なメニューを要求されることもあります。

「この間イタリアに行ったら、ピッツァ・マルゲリータにこんなサラミ乗せて食べさせてくれたんだけど、できる?」

リクエストにお応えできる場合は「できますよ」とお出しするのですが、「じゃあ次からメニューに載せてよ」と言われても、それはしません。代わりに「お客さまノート」に、「今日はこれを気に入っていただけた」 という情報を書き込みます。それをみんなで共有するのです。 そうすれば、同じお客さまが次に来店された時、「今日もこの間の特別メニューを召し上がりますか」と対応することができます。特別な対応はメニューで一般化するのではな く、そのお客さまとレストランの間の秘密にしておけばいいのです。 

「今日何があった」という情報も、パソコンなどではなく、この「お客さまノート」というアナログ手法でデータベース化しています。箇条書きで、お客さまごとにページを分けています。そして翌日の朝のミーティングで、「昨日来ていただいた○○さんに、こういうことをしたら喜んでいただけた」と共有します。

ほかのレストランとは、営業日報の最後にある作文スペースを活用して、情報交換をしています。今日1日の流れ的なものを書く欄のほかに、「ストーリーオブエクセレンス」という「今日、○○さまにこういうことをしたら、すごく喜んでいただけました」 というサービスの成功例を書く欄があります。それを翌日のミーティングで、「昨日、○○店でお客さまにこういうことをしたら喜ばれたらしいから、うちでもやってみよう」とするわけです。 今ではレストランが4軒あるので、4軒分のメールをセットにして、お客さまノー トと一緒にミーティングに活用しています。

朝のミーティングは30分ですが、中身はとても濃いと思います。情報交換のほかに、企業理念をみんなで唱えたり、行動基準や企業信条を読み上げたり。行動基準や企業信条については、有名な外資系ホテルの真似をして、カードにしたものを配布してあるので、それを読み上げます。 ベースは私が作りましたが、毎年、みんなで相談して改訂しています。現在はヴァージョン5です。

 

クオルスのクレド。カードサイズに折りたたまれているが、両面で8ページある

社名の「クオルス」は、英語で言えば「クオリティ」。資質の高い人材集団を目指し、人材育成を会社の大きな柱にした時に名付けました。 お客さまへの接し方については、基本は「お客さまのファンになる」ということです。 どういうことかというと、名前や顔を覚えるのはあたり前、加えて出身とか仕事とか、興味は何かなどを、コミュ ニケーションを取りながら知っていこうとする姿勢です。 すると、予約が入った時点で、今日の来店は接待なのか奥さまの誕生日なのか、はたまたお子さんのお祝いなのかを、ある程度、察知することができ、サービスをアレンジすることが可能になります。 また、お客さまとのお付き合いを深めていくと、「来週、うちでバーベキューやるから遊びにおいでよ」とか「今度おいしい寿司屋に連れて行くよ」などお店を超えた人間関係も築けます。

こうした接客は、昔、修業したレストランの先輩から学んだものでした。 その先輩は、初対面のお客さま同士をつなぐことまでやっていて、話が合うとテーブルをくっつけて、そこから宴会になったこともあります。そういう接客を目のあたりにして、20代そこそこの若僧だった私は「将来自分のレストランをやるときは、こういう接客をするぞ!」と決めたのです。

しかし、前にも触れたように、1号店をオープンした1993年の上越市では、そういうサービスは受け入れられませんでした。「なれなれしい」と敬遠され、文字だけのメニューで、前菜、パスタ、ピッツァ、メインディッシュが並び、コースもある「Aプラン」は当初不人気。アルデンテのスパゲッティは「生ゆでだ、芯がある」とクレームになりました。

それでも、手を変え品を変え、自分のやりたい接客を貫き通した結果、 今では、どのレストランでもこの姿勢が浸透し、よそのレストランに真似されるほどになりました。いいんです。うちだっていろいろなことをパクっていますし、そうやってお互いに共存共栄し、切磋琢磨していけばいいのですから。

次回「‘012|「食材は、生産者から直接買い付け」へつづく

 

高波利幸 Toshiyuki Takanami

1968年、新潟県上越市生まれ。高校卒業後「服部栄養専門学校」に入学し、料理の勉強を開始する。在学中、ヨーロッパに研修でイタリアへ行き、イタリアの食・文化・人に大きく感銘を受ける。卒業後、イタリアレストランで修行を開始。7年間東京で暮らしたのち、新潟に帰郷。1993年4月、地元上越市にイタリアレストランをオープン。現在新潟、東京都内、川崎に6店舗を展開。

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